R

Rとスナックへ行った。

馴染みの店と思ったら隣に入店してしまった。二人ともその位酔っていた。

Rは「ヤマダ」、私は「ジュンペイ」と名乗った。

ときどき二人で近くに飲みに出るが、初めて行くスナックのアウェイ感たるや、まるで引越先で初めていくと必ず課せられる床屋のオヤジとの対話と同様に、バリアを二重、三重に厚くさせられる。

高校時代からの腐れ縁で、Rは停学をたびたび喰らったが、バス停がたまたま一緒という二人の設定に偽りはない。

ひとしきり話して緊張が少し和らぐと店の女は昔から仲がいいんですねなどと、お決まりの台詞を吐く。

ああ、やっと、使いたかったけど何処で投下したらいいか途方にくれていた一言をこの煙草の煙にまみれたカウンターで放出することができる。

「ああ昔からこいつは、隣の位から10借りてきてずっとそのまま返す気がないようなやつなんだ。」